つらまりブログ

つらまったりもしたけれど、私は元気です。

いまそれでも生きると決めたなら

こないだ、割とがっつり美容外科のお世話になった。

 

学生の頃からほんのりお世話にはなっていた。
たぶん数ある施術の中でも一番敷居が低いワキの脱毛にだけたまに通うような、ライトユーザー中のライトユーザーだった。
ワキだけとかそういう特定の部位に限れば、たいていどの美容外科でもお試し価格的な位置づけで格安で契約できるようになっている。たぶん。
だから、そんなにバイトをガチでやっていなかった私でも、全然普通に支払えた。
確か無制限コースで1万円もしなかったはずだ。というか5000円前後くらいだったような気がする。

 

私は別に、昔から毛深いことに悩んでました、みたいなタイプではない。まあそこは人並みかなあと思う。
むしろどっちかというと悩みの本体は処理の面倒さにあった。
成長スピードに関しては人より少し早いような気もする。夏場は特に毎日剃っておかないとみっともないことになる。2~3日スパンでも大丈夫な人が羨ましい。
毎日最低でも腕と脚と顔をどうにかしなければならないということは、ただでさえ高い私の入浴難易度をグイ~ンと引き上げていた。
加えて、達は不器用だ。私は手先なら割と器用なほうの達だが、ちょっと規模がデカくなると途端にえっていう位不器用になる。
アクセサリーは作れてもボールは投げられないし、図画工作は得意でも段ボールにガムテープが貼れない。
剃刀を自分の手足に滑らせることはどうやら後者に属するようで、毎回最低1か所は意図せず自傷行為をやってしまう。特に関節周りの立体的な部位は難しい。
だから、割と人生初期から脱毛に興味はあった。

 

もうどの媒体で見たのか忘れたけれど、「成人(入学だったかも)祝いに全身の脱毛をプレゼント」という話があった。
ある母親が自分の娘に贈ろうと思っているという話だったのか、ある娘が自分の母親から贈られたという話だったのか、
はたまた将来子供が大きくなったらそういうことをしてあげたいという話だったのか、その辺りは何も覚えていないのだけれど、
それを見て猛烈にいいなあと思ったことは覚えている。
うちの母親からは、たとえ逆さに向けて100万回振ったとしても、絶対にそういう種類のプレゼントは出てこない。
他の候補に負けて出てこないのではなく、そもそも俎上に載ることすらない。そんな感じがする。
誰もが持っているごくごく一般的なレベルの美の概念が、母親の頭からはまるっきり欠落しているのだった。

 

大学生になってしばらくしたある日、脱毛について少し調べてみた。すぐに、エステが行うものと病院が行うものとがあるのだとわかった。
病院は医療用として認められた機器を使うので、比較的少ない回数ではっきりと効果が出る。ちょっと痛い。医師や看護師がスタッフとして居て、万一の場合も診てもらえる。ただし、費用は割とものすごく高い。
エステはあくまでエステであって、医療行為にならない範囲でしか施術できないため、費用は比較的安いが、ずーっと生えてこない状態にはなかなか辿りつけないという。痛みは少なめ。
ざっくりいうとこんな感じっぽい。どちらもやはりメリットデメリットというところだろうか。
私はムダ毛の処理をもうしとうないんや!という強い気持ちがあるので迷わず医療脱毛を選んだが、
痛いのは無理とか、肌に負担をとにかくかけたくないとか、結婚式のときだけ安くでツルツルにしたいとか、そういう場合はエステのがもしかしたら合っているのかもしれない。知らんけど。
現状、病院もエステも両方世の中で生き残っているということは、どっちにもそれなりのよさとか需要とかがあるということなんだと思う。

 

もう少し調べてみると、冒頭にも書いたお試し価格システムを大抵の病院が採っているということがわかってきた。
それで、とりあえず最初は近所の個人経営みたいな皮膚科でワキと、あと腕もやってみることにした。
それで数万円ぐらいだっただろうか。大学生にはかなりつらい。
ベッドに寝た状態で目隠しをされ(毛を焼くレーザー光が目に入るとよくないので)施術スタート。機械がなんかバシュバシュ言ってる。照射!照射!
ワキは割と痛い。「耐えれる範囲の痛さとしては割と痛いほう」っていうくらいの痛さ。腕は大したことなかった気がする。
終わって数日でツルツルになった(タイムラグがある)。が、しばらくするとまた生えてきた。
人体の仕組み的にそういうものであるということは事前に調べて知っていたのだけど、実際に目の当たりにして悟った。あ、これ破産する。
そうして今度はもっと安い病院がないか調べることにした。

 

そのうち、「大手クリニックのほうがいろんな面で得」とか「自分に合ったコースを選ぶとよい」とかの情報にも辿りついた。
大手クリニックだといろんなところに支店があって通いやすかったり、脱毛で貯まったポイントを別の美容術に充てるようなこともできる。
コースはまあいろいろあるけれど、当然部位や施術回数を一回で多く契約するほど割安になる。1個で100円、3個で250円みたいなことだ。

 

結局私はいろいろ検討して、湘南美容外科に行った。
当初ネットで見つけた「ワキ脱毛が何回でいくら」みたいな有限回のコース(正確な値段は忘れたけど異様に安かった)をやるつもりで行ったのだけど、結局、もう少し課金して無制限にした。
押し売りみたいなことは全然なくて、あくまで選択肢の一つとして提示され、自分自身納得したので課金することにした。
腕や脚のムダ毛も早く死滅させたかったけど、さすがにそっちのコースはバイト戦士(ウォーリアー)にクラスチェンジしないと到底手が届きそうになかったので今回はパス。ちなみに6回コースで約20万ほどだったか。
私は死ぬほどビビりなのでリスクとかちゃんと聞いておきたいほうなのだけど、そういうことの説明もしっかりあったし、疑問があっても質問しやすい雰囲気。
あと、私は気にしないけど、プライバシーへの配慮も行き届いてて(名前じゃなくて番号で呼んでもらえる)、まあ…人によったらいろいろあるんだろうなという感じ。

 

実際の施術は、近所でやったときとほとんど変わらない内容だった。バシュバシュ言う。
でも施術室の雰囲気がもう少し清潔感があって居心地が良く個室的で、あとスタッフさんがみんなかわいくてやさしい。
ほんとに(病院ではなく)エステとしてやっている所とかだと、もっともっと雰囲気が良くてゴージャスな気分になれたりするのかもしれない。知らんけど。
スタッフさんはたぶん皆それなりに「いじって」いるのかもしれない。でもスタッフさんたちを見てたらそんなことはどうでもよくなってくる。実際かわいいんだからいいじゃん、という感じ。
まあ私は顔認識が下手なのか整形美人と天然美人の区別ができないんだけど…。だから気にならないだけなのかなあ。

 

それと、やっぱり自分で体験してみないと、説得力のある話ってできない。相談に乗るにしても、何か勧めるにしても。
私が今まで当たったことのあるスタッフさんは皆、なんというか心遣いに説得力があった。
ここでこういう配慮があったらうれしいだろうな~とか、こういうことされたら逆にいやだろうな~ということがみんなちゃんとわかっている。
やっぱり、みんな一通り互いを練習台とかにしてるのかもな、という下衆の勘繰りをしてしまう。

 

なんかすごい褒めちぎっているけど一銭ももらっていない。

 

そんな感じで今たしか合計5回?か6回?ほどやったところだ。
施術と施術の間は数か月~半年ほど空けるよう言われる。人体の仕組み上そうする必要があるらしい。
だから思い立ってからムダ毛を殲滅できるまでには年単位の時間がかかる。私は先延ばし癖のせいで年単位で期間を空けがちなのだが…。
これだけでもかなり日々の負担は減ったが、まだ完全勝利には至っていないため、無制限にしといてよかったーと思っている。

 

ただそれだけのライトユーザーだった。

 

ライトユーザーのところにもメルマガは来る。そりゃそうだ。むしろライトユーザーだからメルマガの送り甲斐があるってものだ。
元(?)醜形恐怖症でうっすらと整形に興味のあった私はたまにそのメルマガを読んでいた。
私の見た目上のコンプレックスといえば、1位:贅肉、2位:髪の癖、3位:一重、4位:毛穴、5位:丸爪、てな感じだ。
その中で美容外科がなんとかしてくれそうなものといえば1位3位4位あたりだろうか。2位の根治療法もそろそろ開発してほしいような気もするが…。何かこう頭皮の毛穴をどうにかする的な。
しかし私は脂肪吸引とか、二重形成の手術とか、切ったり身体に何か入れたりするタイプの施術はあまりやりたいと思っていなかった。
手術の傷跡が治るまでなかなかしんどそうとか、成長や老化に従って予期せぬ不自然な形状になるリスクがあるのではないかとか、そんな不安による。
自分のコンプレックスの重みと、その不安とあと金銭的な負担とを天秤にかけるといつも後者が勝つ。だから実行に移さなかった。

 

あるとき、興味深い施術がメルマガで紹介されていた。
なんでも、皮膚を切ることなしに、脂肪だけを選択的に破壊する「クールスカルプティング」という痩身術があるらしい。
脂肪吸引という施術を初めて見聞きしたときも大概都合の良いことを考えつく人がいるものだなと思ったが、この都合の良さはさらにその上を行く。
詳しく調べてみると、脂肪はその他の組織よりも融点が少しだけ高いのだという。その温度差を突く形で、痩せたい部分を冷やしてやる(専用の装置がある)と、その部分の脂肪だけが凍って死ぬ。
死んだ脂肪はその後数カ月かけてゆっくりと体外に排出される。そうやって減った脂肪の分だけ施術箇所が痩せるというわけだ。あったまいー!
ただし、これは非常にまともな部類の都合の良い話であるので、それなりの料金が取られる。
クリニックのサイトで見ただけでは計算方法がよくわからなかったが、まあだいたい数十万レベルのお金が必要になりそうだということはわかった。
さすがに高いな、どうしようかと思っているうちに、その思考はつるりと脳内からフェードアウトしていった。
先延ばしである。

 

その後色々あって、私はどうしても体を動かすことを好きになれないし、好きでないことには取り組めない人間なのだなあと悟った。
そしてふと、お金で努力したっていいじゃん、という思考が湧いた。労働の代償として得た金銭をつぎ込むことだって努力の一種だろう。
いや、努力せずに美を得ることが悪だと思っているわけではないが、ダイエットこそが王道で、医療の力を借りることは一種のチートだというようなイメージは正直あった。
でも、どちらもコストを払って自己実現を目指しているという点では何も変わらないのでは。そのコストの中身がちょっと違うだけだ。

 

じゃあさっさとやっちゃったほうがいいなということで、予約を取ってじっくり相談させてもらうことにした。
しかもついでだからと腕と脚の脱毛についても話を進めることにした。どうせ人生中のどこかの時点で殺そうと思っていたムダ毛である。これも早い方がいい。
予約を取るという行為がとにかく苦手なので、1回の予約にできる限りの用事を詰め込みたがるのはADHDの習性だ。
当日遅刻しませんようにと飲み始めたチロシンのサプリに祈りながら、予約の時間を手帳に書き込んだ。

 

(つづく)