つらまりブログ

つらまったりもしたけれど、私は元気です。

私の代わりに生まれてくる人間は

私は脚が太い。

 

いや脚以外もなかなかのものだが、とりわけ脚が太い。というか形が悪い。
太いにしてももうちょっと均整のとれた太い脚だったらいいのにと思う。アンバランスなのだ。
正直他人から見たらどうでもいい程度の歪みかもなとは思う。とはいえこっちは24時間365日その脚と苦楽を共にしなければならない。
それならやっぱり自分の身体が自分にとって心地よい形をしているというのは結構大切なことなのではないかと思う。

 

私は人形のような見た目への憧れが強い。
理想的には「まるで生命が宿っているかのようと評される人工物」くらいの希薄な生命感で生きていたい。
健康的という言葉からは対極にある、血色のない白い肌、ほとんど棒きれのような手足、みたいなのが好きだ。それを無理に目指すことがよいことなのかはさておき。
もうちょっと現実に寄せていくとすれば、いわゆる量産型とか地雷とかと呼ばれる系統の見た目は結構好きだ。自分をああいう風にできる技術も素地もないのでやらないが…。
ゴスロリとかもいいなーと思うほうではあるがそこのカルチャーに飛びこんでがっつり実践したいとまでは思わない。私の理想とは何かちょっとまた違うので。
もっとこう、そこらへんのアパレルではちょっと見ないくらいの布量をつぎ込んだ仰々しいフレア型をしていながら、潔い無地、どシンプル、みたいなスカートが欲しいのだ。もちろん丈は長めだ。
そこから折れそうな脚が伸びているのがかわいいのイデアだと私は思う。私は脚フェチなのかもしれなかった。

 

だが翻って我が身に目を落とすと、今回の生で折れそうな手足になることはちょっと無理そうだった(ヲ格を項とする他動詞の可能形として解釈することはめっちゃ鍛えれば可能かもしれないが)。
肌のほうは幸いそれなりの白さに生まれついたが、二物はなかなかもらえないものである。

 

そういうわけで、ちょっと生命感が薄くなるくらい細くなりたい、特に脚、という願望は昔からあった。
けれども体を動かすのは嫌いだし、食い意地は張っているし、体質的にもハンデは大きいような気がしなくもないし、願望が実現できることはなかった。
一回そこそこ頑張ったことがあったが全然痩せなかったし、拒食症になりかけたのでやめた。

 

だから、いわゆる普通のダイエット以外にも痩せる手段があるというのは、福音だった。
しかも手術みたいなことはしなくていい。高いけど。でも高いだけの価値があると思った。

 

そして予約していた日、無事早すぎるくらいの到着を決め、問診票に記入し、施術についての説明を一通りしてもらった。
今回も当然前からお世話になっていた湘南美容外科さんである。
カラオケボックスばりの個室に案内され、スタッフさんが丁寧にレクチャーしてくださった。この方も同じ施術を受けたことがあるそうだ。脚ほっそ。
専用の装置から、いわばトイレ掃除のラバーカップのような吸い込み口の付いたホースが伸びており、その吸い込み口を脂肪を減らしたい部位にあてがい固定する。
吸い込み口には、人体のさまざまな箇所に適合するよう設計された何種類かの形状・サイズがあり、大きい物を1回使っても、小さい物を1回使っても、料金は同じだ。
サイトには1エリアいくらというような表記がしてあるが、要は吸い込み口にかかわらず1吸引いくらということなのだ。
そうしたら大きければ大きいほど得なのかという気がするがそうではない。形状が合わず隙間ができてしまうと施術は失敗してしまう。小さい物のほうがよい場合もあるのだ。
どうすれば最小の吸引数で最大の効果が得られるか、こちらの希望を聞きながら最適なものをスタッフさんがめちゃくちゃ丁寧に考えてくれる。
実際必要に応じてお肉をつまみながら、ここは効きそうとかここは効かなさそうとか教えてもらえる。私は体のあらゆる箇所がつまめる女なので、結構凍らせ甲斐がありそうだった。
しかしお腹だけは検討のために触れられるだけで無理寸前だったので(触覚過敏)、お腹にはこれ使えないな…と思った。

 

装置はスイッチひとつで動き出し、約40分の間、贅肉を吸引しつつ絶妙な温度に冷却し続ける。
凍傷になるほど冷たくはない(というか防止処置をしてもらえる)が、冷蔵庫並みには冷たいので、次第に感覚がなくなり、痛みは結局ほとんど感じないという。
それが終わると今度は、スタッフさんが2分間マッサージをしてくれる。冷やした箇所をもみほぐすように。これが結構つらいらしい。
しかしこれをやるのとやらないのとでは最終的な効果が大きく違ったというデータがあるそうで、ここだけ頑張ってください、と言われた。
そして、複数箇所に施術する場合は、また吸い込み口をあてがうところから初めて、マッサージまでを繰り返す。
だいたい2~3カ月もすれば、凍って死んだ脂肪細胞は、体内の老廃物が排泄物となって出て行く普通のサイクルに乗って、体外に排出されてしまう。
1回の施術で脂肪の約20%減が見込め、同一箇所を2回(もしくは少し重なりができるように配置して1回ずつ)施術するとかなりはっきりと効果が実感できるという。
終わった後はすぐに普通の生活に復帰できる。人によっては吸引した箇所に内出血が出ることもあるが、単なる内出血なのでそのうち治る。
かがくのちからってすげー!という感想しかない。

 

一通り説明を受けた後は、医師と話せる時間がもらえる。説明してくれるスタッフさんは別に医師ではないので、一応言えること言えないことがあるのだろう。
相変わらずリスク面の質問をしてしまうが、非常にリスクの低い施術だと聞き(細かい数字は忘れたので言及しない)安心する。
また、施術箇所だけやたらと痩せてしまい、未施術箇所と比べてアンバランスになることはないか?というのも気になっていた点であったが、
わりとマイルドに効果が出るものだそうなので、それも心配するほどではないようだった。
これはスタッフさんからも聞いていたが、吸い込み口の中心が一番効果が高い。中心から離れれば離れるほど効果はゆるやかになり、周辺部が一番弱い。
そんなグラデーション的な効き方をする施術であるため、不自然にえぐれるような痩せ方にはならないのだという。

 

そして最後に、予算とのすり合わせに入る。見積もりだ。
私はとにかく脚が一番気になるんだよーということで話を進めていたので、結局脚だけに集中して施術することにした。まあ、元々の計画通りだ。
スタッフさんが部位ごとに優先順位をつけて整理してくれるので、考えやすかった。
結局、全体的に棒きれに近づけたいということで、8エリア(片脚4エリア)つぎ込むことにした。それで約40万。
もっと節約する方法として、モニターとして1回で複数エリアを契約しつつ、ビフォーアフター写真を提供するという技もある。それで約35万。
あんまりちまちま追加するとモニター適用がしにくくなるので、もし今回やってみてもっと攻めたいと思ったら同じ8エリアをもう一回さらうつもりでこう決めた。
あと手足の脱毛についても簡単に説明を聞き、全身コースにしてしまうのもありだし、背中とかが要らなければ手足だけのままでも、などと提案してもらう。結局約20万の手足のみにした。
どうせ背中の空いたドレスを着る機会も海に行く予定も当面ないのだ。

 

加えて、会員ポイントと有料会員システムをうまいこと組み合わせて、もう少し料金を削り取る技をスタッフさんに教えてもらう。
たぶんそうしたら幾許かのインセンティブでもあるんだろう(下衆勘)。でも優しくしてもらったし、どうぞどうぞと思う。
私は世の中の様々なサービスを利用するにあたり、ボーナスステージ的な客でありたいのだ。クソ客も多いこの世界で、私に当たったときくらい今日はいいことがあったなあと思ってもらえたらうれしい。
それに普通に条件的にもまあ自分にとっても得かなという内容だったので、有料会員になることにした。

 

それにしても、こんなデカい買い物をしたことがないのでどうやって支払ったものかと困っていたが、そこのところもスタッフさんは慣れていて丁寧に親身に説明してくれた。
分割払いもできるし、現金一括でもいいし、現金とクレカの組み合わせということも可能だ。支払いも後日(施術日当日の施術前)でかまわないと言ってもらえた。
クレカ会社のポイントが貯まるかなーということで、限度額内に収まる程度のまとまった額をクレカで払い、残りはATMから下ろしてきたりした。

 

一通り契約やらなんやらが終わって部屋を出ると、なかなか時間が経っていた。
めっちゃあのスタッフさんを拘束しちゃったなと思ったけど、私は今回この支店にとってそれなりのエモノだったわけで。
数十万の契約が取れるかどうかが私への対応にかかっている、とスタッフさんたちの側からは思えることだろう。緊張するよなあ。
この心理を理解したままダークサイドに堕ちると、高い買い物をしてやっているんだと調子に乗る人間ができるのだろう。
いや、それともこの程度の話なんて日常茶飯事だったりするのだろうか。
そんなことを考えながら帰途についた。

 

いつまでも当日のレポートに辿りつけない。(つづく)