つらまりブログ

つらまったりもしたけれど、私は元気です。

僕らの生きてた地獄を

クールスカルプティングをやった話。やっとこさ本編。

 

予約時間にクリニックに着くと、今回もやっぱりものすごくプライバシーに配慮した形で、施術内容の確認がなされ、そして料金を支払った。
前にも書いたように、知らない人と顔を合わせる待合室で名前を口頭で呼ばれることのないよう番号を振ってくれるし、
内容確認の際は、いろんなメニューや身体のパーツが予め印刷された表を使い、「こちら(手で指し示す)の内容」「○○番の部位」というような具合で、他人に内容がわからないように最大限配慮して行ってくれる。
もちろんコロナとか関係なくカウンターには衝立があり、隣の人が受付と何を話しているかは見えないようになっている。
これならVIOの脱毛(それにしても、初めてこの名称の意味を知ったときにはいいネーミングだなと感動したものだ)とかのちょっとデリケートな施術のときでも気にならなくていいと思う。
料金の支払いはあっけないものだった。さよなら私の月収ピーか月分。でも脚の脂肪がこれでいくらか消せるんだもんな。
物質と反物質はぶつかると対消滅するが、マネーと脂肪もぶつけると対消滅するのだなあ。そんなアホなことを考えた。

 

検討初期段階では全然気づいておらず、契約直前ぐらいにさらっとスタッフさんから言われてアッたしかに!と思ったのだが、1日に8エリアもこの施術を行うということはわりとなかなかの時間を要する。
40分×8か所で単純計算で320分。実際は他にもやることがあるのだから、ほとんど半日仕事だ。
施術は複数日に分けてもよいし1日で済ませてもよいし、どちらでも都合の良い方でと言ってもらったので、迷わず1日に詰めこんだ。身支度困難勢にとって外出回数は少ない方がいい。

 

いざ施術本番、の前に、どういう風に施術を行うかの最終打ち合わせおよび確定作業と、あとモニター割引の対価としての写真撮影・身体計測が必要だ。
自分の下着を脱ぎ(写真に写り込んでしまうと身バレに繋がるため)、用意されていた使い捨ての下着を履き、その上からシンプルなブルマのような、究極に没個性的な黒い水着を重ねて履く。
おお、よく広告に載っている写真の人みたいだ。いやそのための写真を提供するのがモニターなのだから当たり前だが。ちなみに今回は顔は出さず、施術部位だけの写真を提供するという条件だ。
よく、あやしい業者の広告とかだと、ビフォーとアフターで化粧の気合の入り方が違うやんけとかライティングの加減やんけみたいなことがあるが、
そういうことにならないように、つまり誰がいつ撮影しても一定のアングルになるように、ここに沿って立ってくださいねみたいな板が用意されていた。
そして写真だけでなく、採寸もある。スタッフさんがメジャーで決まった場所のサイズを計測してくれる。もちろん記録される。前後で比較するのだろう。
当然だけど結構太くて心のなかで凹む。でもそのダメージは純粋に数字に起因するものだ。
スタッフさんの視線とか態度によって傷つけられるようなことはなかった。他人にコンプレックスをバーンと晒しているにもかかわらず、なぜだか安心して信頼できた。
それはたぶん、(おそらく)同性であることに胡坐をかくことなく、私の身体に敬意を持って接してくれていたからかもしれない。
敬意といってもそんな難しいことではない。お世辞とかでもない。触れる前にちょっと失礼しますと添えてくれるとか、その程度のことだ。
普通の病院のお医者さんだと、時々いる。あっ医療行為なんで。触らないとわかんないんで。そんなノリで、触診にまったく遠慮を見せないタイプの人。
女医と女性患者の組み合わせのときのほうが、却ってずけずけという言葉がちょうどいいような勢いで触られる場合も多いような気がする。
医師にとっては日常の流れ作業的なしょうもない仕事の一つだし、たしかに遠慮なんてしているだけ時間の無駄かもしれない。だからガシガシ行く人がいるのも理解できる。
でもたいていの場合、医師の診察を受けるということは、受ける側としてはそれなりに非日常だし、やっぱり自分の身体を他人に見せるというのは、いくら必要に迫られてであってもそれなりにはストレスだと思う。
とか語っているが、私自身は診察という明確な目的のもとで医師に身体を見せたり触らせたりすることには、実はそんなに抵抗がない。気にならないほうだ。
それでも、敬意を持って身体を扱ってもらうことは明らかによい体験だった。ある種の癒しや救いとさえ言ってもいいかもしれない。
自分の身体を大切にするということが全然ピンと来ない人生を送っていたが、ああ自分の身体も尊重されるべきものなのかもしれないな、とその時初めて思ったのだ。
ただの身体計測に対して思いつくことがいちいち重すぎである。こんなことを考えていたなんて当のスタッフさんが知ったらドン引きだろう。

 

今日施術に当たってくれるスタッフさんは、前回説明や部位の選定をしてくれた人とはまた別の人だったが、この人がまあめちゃくちゃ有能だった。
前回の打ち合わせ内容で既に私は十分納得していたし、もちろんその内容がスタッフ間でもきちんと引き継がれていたのだが、それを踏まえたうえで今日の方はさらに新しい提案をしてくださった。
元々、(内腿3か所+膝上1か所)×両脚、で8か所の設定であった。しかし、そのスタッフさんの見立てによると、膝の直上よりもう少し内腿に寄った、斜め上ぐらいの微妙な位置のほうが、私の希望に合い、かつより高い効果が見込めるという。
そうすると、内腿に3か所も使わなくてよくなる。2か所で十分だろうと。では余った1か所はというと、次点の優先度であった太腿の付け根(バナナロールというらしい)に回してはどうか?という提案だった。
秒で乗った。

 

ちなみに、この信頼できそうなスタッフさんいわく、私のふくらはぎはあまりクールスカルプティング向きではないようだった。自分で思っていたより筋肉率が高いっぽい。私に筋肉があったとは知らなかった。
クールスカルプティングを重ね掛けしまくって棒きれレッグになる夢は儚く散ってしまった。

 

とりあえず、今回どういう風に施術を行うかこれで決まったので、それを今度はペンで身体にマーキングしていく。印を付けておかないと確かにどこに器具をつけていいかわかんなくなりそうだものなあ。
どうやらホワイトボードマーカー的なものを使っているようだった。書き直すとき(毎回これでいいかどうかこちらに確認しながら進めてくれる、気に入らなければ微調整も頼める)はアルコールで拭く。
しかしこれ、薄くなるが、綺麗さっぱり取れるという感じではない。今が夏で、半袖とミニスカートで来て脚や腕をやってもらっていたとしたら終わっていた。教訓:クールスカルプティングをやるなら秋冬に限る。
ひとしきり身体に印を書きこまれ終わったら、いよいよ施術室へ。殺戮の宴が始まる。

 

角度調節できるベッドの上で、座ると寝るの間ぐらいの体勢になる。プールサイドで雑誌を眺めて寛ぐセレブか、毎日テレビを楽しみに過ごしているお年寄りみたいな角度だ。
凍傷防止などのため、施術部位にはべちょべちょのジェルパッドが貼り付けられ、その上から器具が装着される。
寒くないようにブランケットがかけられ、痛くないようにクッションが詰められる。ベッドサイドには持参を勧められた各種暇つぶし。飲み物まで出してもらえて、何もかも至れり尽くせり。介護されているかのようだ。
装着箇所はベルトでぐるぐる巻きに固定され、まず減圧だけがかかる。吸われる肉。痛くはない。
そしてスタートボタンが押されると、いよいよ冷却が始まる。万一の時のためにナースコールが手渡され、スタッフさんは一旦退室する。
ひんやりしてきたなあと思ったらすぐにキンキンになった。保冷剤を当てているような感覚。そして、もう少し温度が下がったら痛いのだろうなという手前で止まる。それが40分ほど続く。
痛くはない。ただとにかく冷たい。飽きるほどに。飽きてもタイマーが止まるまではやめられない。
事前の説明やネット上の口コミでは、そのうち感覚がなくなるから大丈夫とのことだったが、感覚が完全になくなるまではいかなかった。冷たさが背景化するというか、冷たいことはしっかりと冷たいのだけれど、なんとなく気にならなくなってくる。
体勢を変えられないのが少ししんどいが、持ち込んだ本やスマホを見ていると時間はどんどん経つので、長すぎて苦痛というほどでもなかった。
タイマーが気の抜けた音を立てると、遠隔で見れるのだろう、スタッフさんが駆けつけ、器具とジェルパッドを取り外しつらいと噂のマッサージをしてくれる。
マッサージは思っていたほどはつらくなかった。種類としては、痛いような痒いような、霜焼けのような不快感。凍った脂肪がシャリシャリと音を立てるのが結構ホラーだ。
私は身体を揉まれることに対する触覚過敏が少しあるから、そこ由来かもというつらさも多少あった。肩やお腹は揉まれると完全に無理になってしまうくらい過敏が強いので、たぶん耐えられないと思うが脚ならまあなんとかだ。
ジェルパッドを取った後は拭き取ってくれるが、このべちょべちょも容易には取りきれないもののようだったので、多少ベタベタが残っていても大丈夫なように着てくる服とかその後の予定とか考えたほうがよさそうだ。
これを8か所やる。なかなかの長丁場だ。スタッフさんたちがめっちゃ気遣ってくれるがぶっちゃけこっちは寛いでるだけだ。まあ、しばらく動けないしんどさは多少あるけれど。
お手洗いはマッサージの後、次の部位に移る前のタイミングで申し出れば問題ない。

 

途中から、まだ経験が浅そうなスタッフさんがもう一人加わり、二人がかりで私の脂肪を殺してくれる感じになった。
というか、たぶんその新米さんの練習の機会なのだろう。やりやすい客だと思ってもらえたみたいでうれしくなる。
最初からいたほうのスタッフさんがサポートしながら、後から来たほうのスタッフさんが器具の装着を進めていく。明日の美の作り手が目の前で育成されている。寝ながらできる社会貢献活動である。
そのうち新米さんが一人でやる回も出てくるようになる。全部お任せしている立場でなんだが、心の中で応援する。
あと、後から振り返って気づいたけど、私が打ち合わせに時間かけすぎてベテランさんが休憩取れてなかったりしたんだと思う。すみません…。

 

おそらく外ではもう日が暮れているころ、最後の部位をやっていると、なんだかポコポコと隙間ができているような変な音や感触がする。
気のせいかな?と思ったがやはりポコポコいうので、ついにナースコールを使ってみた。そしたらスタッフさんが飛んできてくれて、状態を確認してくれた。
泡が入ってしまってそれが動いているようだが、器具は密着しているので問題ないとのこと。たしかにしっかり吸われている感触はちゃんとしている。
そういう感じで安心して最後まで施術を受けることができた。

 

終わったらさすがにちょっと疲れていた。
私は何もやっていないけど達成感があった。頑張ったのはスタッフさんたちなのだが。

 

帰って身体の状態を確かめてみると、脂肪が死んだあたりは微妙に痺れたような不思議な感触だ。
皮膚や筋肉はちゃんと生きているので触覚があるのだが、脂肪は死んでしまったので感覚がない。なのでとても奇妙な痺れ方をする。
術後2~3日は筋肉痛のような我慢できる程度の軽い痛みが続いたが、すぐに治った。
だがそれが治った頃に、内腿にだけ内出血がわっと出た。なかなかグロい。時間差で出る場合もあるのか。
これがフェイスラインや夏場の腕とかだったらと考えると結構大変だ。やはり大抵の部位を衣服で隠せる秋冬がいい。
内出血は10日程度で跡形もなく引いていった。そして内腿以外は内出血にならなかった。
まあ、経過はかなり個人差が大きいっぽいので、あくまで一例として。

 

そして気になる効果のほどであるが、3週間経った今、ぶっちゃけまだ全然わからない。
体重が減るわけでもないし(もともとそういう性質の施術だ)、少しずつ変化する見た目って実感できるのだろうかという不安は少しあるが、
モニター割引条件である写真撮影が2か月経ったころに設定されているので、その頃にはかなり効果が出ているのだろう。
今の時点で唯一感じられた変化といえば、食生活などは一切変えていないのに、お通じが増えたような気がすることだ。気がするレベルだが。
まあでも、「死んだ脂肪は少しずつ体外に排出される」という話だったのだから、そんなに変な話ではない。

 

なんにしても、放っておいても時間は経つ。春が来たら、前に買った花柄のワンピースをまた着るのだ。
その時に、鏡のなかの自分をもう少し好きになれたらいい。